~ 2025年、被害は過去最悪ペース。あなたとご家族を守るために ~
【警察庁発表】2025年の特殊詐欺被害額は、上半期だけで約597億円。前の年の同じ時期と比べて、なんと2.6倍に急増しています。 (出典:警察庁「令和7年上半期における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)
はじめに ― 「自分は大丈夫」が一番危ない
「詐欺なんて、よく知らない人がひっかかるものでしょう」
そう思っていませんか?
実は、その気持ちこそが、詐欺師たちに狙われる最大の理由なのです。
詐欺師はとても頭がよく、日々新しい手口を考えています。ニュースで「こんな詐欺があります」と報道されると、すぐに手口を変えてきます。「昔の話だから知っている」という安心感が、逆に落とし穴になるのです。
この記事では、今まさに日本中で起きている最新の詐欺手口を、わかりやすく丁寧にご説明します。読んでいただいた後に、「こういう話が来たら絶対に断れる」という自信を持っていただくことが目標です。
ぜひ最後まで読んで、ご家族やご近所の方とも情報を共有してください。
第1章 今、日本で何が起きているのか? 最新の被害データ
被害額が過去最悪のペースで増えています
警察庁の最新発表によると、2025年1月から6月までの半年間だけで、特殊詐欺の被害額は約597億3千万円にのぼりました。これは前の年の同じ期間(約228億円)と比べて2.6倍以上という、とんでもない数字です。
このペースが続けば、2025年の年間被害額は1,000億円を超えると見込まれており、過去最悪だった2024年(約719億円)を大きく上回る可能性があります。
なぜここまで増えているのでしょうか?
理由は三つあります。
一つ目は、手口がとても複雑になったことです。昔は「電話一本でお金をだまし取る」という単純な手口が主でした。今は、電話・スマートフォンのメッセージアプリ・ビデオ通話・偽のウェブサイトなど、複数の方法を組み合わせた「複合型詐欺」が増えています。手口が複雑なので、被害者が「おかしい」と気づきにくくなっているのです。
二つ目は、AI(人工知能)の悪用です。最新の技術を使うと、声や顔を本物そっくりに作り出すことができます。「息子の声に聞こえる」「警察官の顔が映っている」と思っても、それが偽物である可能性があります。
三つ目は、スマートフォンの普及です。スマートフォンを通じた詐欺が急増しており、高齢者だけでなく若い世代も被害に遭っています。
第2章 今すぐ知っておくべき! 最新の詐欺手口6つ
手口その1 ニセ警察詐欺(2025年最大の被害)
~「あなたの口座が犯罪に使われています」という電話に注意~
これが今、最も被害が多い詐欺です。2025年上半期の被害額は約389億円で、特殊詐欺全体の65.2%を占めています。1件あたりの平均被害額は828万円と、非常に高額です。
どんな電話がかかってくるのか?
突然、こんな電話がかかってきます。
「警視庁のものです。あなたの銀行口座が、振り込め詐欺グループに悪用されています」
「身の潔白を証明するため、口座にあるお金をすべて指定の口座に移してください」
「これは捜査のための手続きです。家族には絶対に話さないでください」
なんと、電話の画面には「警察署」の本物の電話番号が表示されることもあります。これを「スプーフィング」という偽装技術といい、実際の警察署番号を画面に表示させることができるのです。
さらに最近は、ビデオ通話で「警察手帳」や「逮捕状」を見せてくることもあります。しかしそれらはすべて偽物です。
大切なことを覚えてください: 警察が「お金を移してください」「全財産を教えてください」と言うことは絶対にありません。このような電話はすべて詐欺です。
手口その2 還付金詐欺(ATM・ネットバンキングを悪用)
~「医療費が戻ってきます」は嘘です~
市役所・税務署・年金事務所などを名乗り、「医療費の払い戻しがあります」「年金が未払いになっていました」などと電話してくる手口です。
典型的な電話の流れはこうです。
「○○市役所の保険課です。以前、医療費の還付に関する封筒をお送りしたのですが、届きましたか? 手続きの期限が本日までとなっていますので、今すぐ携帯電話をお持ちになって、お近くのATMに向かってください」
ATMに着くと、電話の相手が「〇番のボタンを押してください」「この番号を入力してください」などと指示してきます。言われた通りに操作すると、実際には犯人の口座にお金を振り込んでしまうのです。
覚えておいてほしいこと:
市役所や役所の職員が、ATMの操作を電話で指示することは絶対にありません。「ATMで還付金を受け取れる」というのはウソです。
手口その3 パソコン・スマートフォンサポート詐欺
~「ウイルスに感染しました」という画面に騙されないで~
パソコンやスマートフォンでネットを見ていると、突然こんな画面が出てきます。
「警告! あなたのパソコンはウイルスに感染しました。すぐにサポートセンターに電話してください」
画面には警告音が鳴り続けたり、大きな赤い文字が表示されたりして、とても怖く感じます。しかし、これはすべて偽物です。
電話すると、「ウイルス除去のサービス料」として数万円から数十万円を請求されます。また、「パソコンを遠隔操作で修理します」と言われてソフトをインストールさせられると、その後、銀行口座の情報を盗まれたり、知らないうちにお金を送金されたりすることがあります。
警察庁によると、2025年上半期だけで、このサポート詐欺の被害件数は679件、被害額は約8億5,000万円にのぼっています。
このような画面が出たら: 電話番号に電話せず、パソコンの電源を切るか、ブラウザを閉じてください。家族や信頼できる人に相談しましょう。
手口その4 キャッシュカード詐欺(カードを直接奪う)
~「カードを預かりに来ます」は詐欺です~
「お客様の口座が不正に使われています。確認のためキャッシュカードをお預かりに伺います」
このように電話してきた後、本物の銀行員や警察官に見せかけた人物が自宅まで来て、キャッシュカードを直接受け取っていきます。「封筒に入れてください」と言われ、その場で別のカードとすり替えられるケースも多く報告されています。
同時に暗証番号を聞き出し、カードを持ち去って預貯金を引き出してしまうのです。
覚えておいてほしいこと:
警察や銀行がキャッシュカードを「預かりに来る」ことは絶対にありません。自宅にキャッシュカードを取りに来ると言われたら、すぐに電話を切ってください。
手口その5 SNS型投資詐欺(スマートフォンを使った新手口)
~「絶対に儲かる」投資話には必ず罠があります~
スマートフォンのSNS(ライン・インスタグラムなど)に、有名人の写真を使った広告が届くことがあります。「〇〇(著名な実業家や芸能人の名前)がすすめる投資で大儲け」などというものです。
広告をタップすると、LINEグループに誘導されます。グループの中には「先生」と呼ばれる投資の指南役や、「私はこれで500万円儲けました!」などと書き込む人々がいますが、これらはすべて詐欺師が作ったサクラです。
「お試しで少し入金してみると、すぐに増える」と言われ、最初は本当に利益が出たように見せてくれます。安心した被害者がどんどん入金すると、最終的に「出金には手数料が必要」「税金の支払いが必要」などと言い訳をして、お金を返してくれなくなります。
警察庁の発表では、2025年上半期のSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の被害額は約590億8,000万円にのぼっています。
覚えておいてほしいこと:
「絶対に儲かる」投資は世の中に存在しません。SNSで知り合った人からの投資話には、絶対に応じないでください。
手口その6 AI音声を使った「息子・孫の声」オレオレ詐欺
~本物そっくりの声でも騙されないで~
かつてのオレオレ詐欺は「息子の声に似ていない」ことが多く、「声が違う」と気づく方も増えていました。ところが2025年は、AIを使って実際の家族の声をコピーした詐欺が登場しています。
「お母さん、ぼくだよ。事故を起こしてしまって…お金が必要なんだ。今すぐ送ってほしい」
電話に出ると、本当に息子や孫の声そっくりに聞こえます。SNSや動画に投稿された声をAIが学習して、本人に似た声を作り出すことができるようになっているのです。
その後、「上司が取りに行く」「弁護士が伺います」と言って、知らない人物が自宅に現金を受け取りに来ます。
このような電話が来たら: いったん電話を切り、必ず本人の携帯電話に直接電話して確認しましょう。急いでいると言われても、必ず一度電話を切ってから確認することが大切です。
第3章 なぜ賢い人でも騙されるのか? 詐欺師のテクニック
詐欺師たちは、人間の心理を巧みに操る専門家です。いくつかの巧妙なテクニックを使って、冷静な判断ができないようにします。
テクニック① 「急いでください!」で焦らせる
「手続きの期限は今日だけです」「今すぐATMに向かってください」
時間のプレッシャーをかけることで、じっくり考える時間を奪います。焦ると、「家族に確認する」「警察に電話する」という冷静な行動ができなくなります。
テクニック② 「誰にも言わないで」と孤立させる
「捜査中なので、家族には絶対に話さないでください」「口外するとあなたが逮捕されることになります」
家族や友人に相談させないよう、一人にさせます。相談できれば詐欺と気づける可能性が高いため、詐欺師は被害者を孤立させようとするのです。
テクニック③ 「権威」を使って信用させる
警察・裁判所・税務署・銀行などの名前を使います。普段から「権威ある機関」を信頼している人ほど、だまされやすくなります。2025年は偽の警察手帳や逮捕状を映像で見せる手口も増えています。
テクニック④ 「最初だけ本当のことを言う」で信用を積み重ねる
「先月、医療費のお知らせを送りました」「3年前のお薬代が対象になります」
実際には知らない話でも、「そういえば受け取ったかも」と思わせることで信用させます。
第4章 詐欺から身を守る 7つの鉄則
鉄則その1 「電話でお金の話が出たら、すべて詐欺」と思う
電話で「お金を振り込んでください」「ATMに行ってください」「キャッシュカードを預けてください」という話が出たら、相手が誰を名乗っていても、すべて詐欺と考えてください。
役所・警察・銀行が、電話でこのような指示をすることは絶対にありません。
鉄則その2 すぐに電話を切る
「おかしいな」と少しでも思ったら、すぐに電話を切りましょう。「失礼かな」「怒られるかな」などと考える必要はありません。相手が本物の役所や警察なら、あとで折り返しても困りません。
鉄則その3 必ず本人に直接確認する
息子・娘・孫から「困っている」という電話が来たら、一度電話を切り、必ず普段使っている本人の携帯番号に電話してください。「今、電話がつながらない」と詐欺師が言っても、しばらく待って再度かけ直してください。
鉄則その4 家族と「合言葉」を決めておく
あらかじめ家族と「合言葉」を決めておくと安心です。「本当に自分かどうか確認するために、合言葉を言って」と伝えれば、詐欺師には答えられません。
鉄則その5 留守番電話を常に設定する
自宅にいるときでも、常に留守番電話に設定しておきましょう。相手の声と要件を確認してから折り返す習慣をつけると、犯人と直接話すことを避けられます。
最近では「迷惑電話対策機能付き電話機」も多く販売されており、怪しい番号には自動的に警告メッセージを流してくれるものもあります。お住まいの市区町村によっては、購入費用を補助してくれるところもあります。
鉄則その6 「+1」「+44」で始まる国際電話には出ない
「+1」(北米)や「+44」(イギリス)など、「+」から始まる国際電話番号からかかってきた電話には、出ないようにしましょう。詐欺に使われる電話の多くが、海外を拠点にした犯行グループによるもので、国際電話から発信されていることが多いです。
鉄則その7 おかしいと思ったら、すぐに相談する
「もしかして詐欺かも」と思ったら、すぐに相談してください。一人で悩まないことが大切です。
相談できる場所:
- 警察相談専用窓口:#9110(24時間対応)
- 消費者ホットライン:188(いやや!と覚えましょう)
- 最寄りの警察署・交番
第5章 もし被害に遭ってしまったら
「だまされた」と気づいたとき、恥ずかしくて誰にも言えないと感じる方も多いです。しかし、被害に遭うことは決して恥ずかしいことではありません。詐欺師はプロです。どんなに賢い人でも騙されることがあります。
すぐにやること
① 銀行に電話して、口座を止める 振り込んでしまった場合、すぐに振込先の銀行に連絡してください。「振り込み詐欺被害」と伝えると、口座の凍結手続きをしてくれます。早ければ早いほど、お金が取り戻せる可能性が高くなります。
② 警察に届け出る 被害届を出すことで、詐欺グループへの捜査につながります。「証拠がなくても大丈夫」と警察は言っています。電話の記録や振込明細など、できる範囲で残しておきましょう。
③ 消費者ホットライン(188)に電話する お金を取り戻すための対処法を教えてもらえます。
「被害を取り戻す」という電話も詐欺です
「あなたの詐欺被害を回復してあげます」「被害金を取り返す方法があります」という電話やメールが来ることがあります。これも詐欺です。一度騙された人の名前と電話番号が犯罪グループに共有され、別の詐欺師から「二次詐欺」の電話がかかってくることがあります。絶対に相手にしないでください。
第6章 ご家族へのお願い
高齢のご両親やご祖父母が心配な方へ、お伝えしたいことがあります。
詐欺被害は「知識がないから」だけで起きるわけではありません。「焦らせられた」「権威に弱かった」「孤立していた」など、心理的な隙間につけこまれることがほとんどです。
**家族にできることは「話し合いの機会をつくること」**です。
「もし変な電話が来たら、すぐに私に電話してね」と伝えるだけでも、大きな安心につながります。
また、「詐欺にひっかかってしまった」と打ち明けられたとき、「なんで気づかなかったの」と責めないでください。被害者はすでに大きなショックを受けています。まず「一緒に解決しよう」と寄り添うことが大切です。
まとめ ― 今日から始める詐欺対策3か条
最後に、今日から実践していただきたいことを3つにまとめます。
1.電話でお金の話が出たら「詐欺」と思う 相手が警察・役所・銀行を名乗っていても、お金やキャッシュカードの話が出たらすべて疑ってください。
2.一人で判断しない。必ず家族や警察に相談する 「急いでください」「誰にも言わないで」と言われたら、それこそが詐欺のサインです。急いでいるときほど、いったん電話を切ってから家族に相談しましょう。
3.困ったときは「#9110」または「188」に電話する 一人で抱え込まず、専門家に相談してください。
詐欺の手口は毎年変わりますが、「人を騙してお金を奪う」という本質は変わりません。この記事で学んだ知識を、ぜひご家族やご近所の方と共有してください。
みなさんの大切なお金と、穏やかな毎日を守るために、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
【参考・出典】
- 警察庁「令和7年上半期における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2025年7月31日)
- 警察庁 SOS47特殊詐欺対策ページ(https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/)
- トビラシステムズ株式会社「特殊詐欺・トレンド詐欺手口レポート2025」(2025年12月)
- 国民生活センター「高齢者の消費者被害」(https://www.kokusen.go.jp/)
- 政府広報オンライン「電話でお金の話は詐欺!」(https://www.gov-online.go.jp/)
- トレンドマイクロ「警察庁2025年上半期国内サイバー犯罪レポート解説」(2025年10月)
